劇団劇場〜Act In Rule〜ポータルサイトにお越し頂き、誠に有難う御座います。
 今回、この公演(以下、敢えて「イベント」と表記しますが)を企画するに当たって目指したものがいくつかあり、それらをご理解頂いた上でご鑑賞頂ければよりこのイベントを楽しむことができると考えましたので、ご説明させて頂きたいと思います。お時間ある方は少々お付き合い下さい。

 「ライブハウス」という場所で舞台活動を行うということは、これまでのお芝居の観念から言えば実現性に乏しく、演者側から言えば非常に「やりづらい」、観客側から言えば「堪能しにくい」ものであると考えます。
 ただ、音楽活動において考えてみた時にライブハウスという場所は、劇場よりも一般的でその数も多く、またフレキシブルな場所であるという面が有ります。これが、音楽が芝居よりもマジョリティを獲得していった理由の一つでもあるのでしょう。自分達はお芝居というものをより皆様に近いものとして感じて頂きたいと考え、ライブハウスでの開催を決定致しました。

 ライブハウスですので飲食も自由ですし、皆様のお好きなようにご鑑賞頂ければと思います。しかし、ここには現実問題、短所も御座います。それは、音楽とは違い、じっくり見るのがお芝居というものですから、劇場に比べて集中して見ることができないという所です。それに、座席のないスタンディング形式ですから、疲れます。

 正直に言います。疲れます。

 それでもここにしかない楽しさ、熱さを少しでも伝えたく、出来る限り皆様に楽しんで頂くことができる様、従来の公演よりもゲーム性やイベント性を重視してあります。
 同じ制限の中で15分の作品を上演していく本編だけでなく、ラストにはエキシビジョンマッチとして各劇団のコラボレーション企画が御座います。これまでの芝居観念から言えば無謀な挑戦であるのも事実ですが、お芝居をライブ感・イベント性の面からより楽しんで頂く試みとご理解いただければ嬉しいです。お酒を飲み、自由に動いて、自由に喋りながら、イベントをお楽しみ下さい。

 さて、今回『劇団劇場』の芯となる「同じ制限の中で」複数の劇団が上演するというテーマですが、ここにも勿論込めた思いがあります。
 一つは、このイベントが只のオムニバス公演を目指したものではなく、「アンソロジー公演」を目指したということ。もう一つは真の意味での自由な作品を感じて頂きたいということです。毎回上演される複数の作品の内容が、「同じルールの下に作られ集められた作品」であるということ、ここにこのイベントの胆があります。
 話は少し変わりますが、かつて詩歌文学の世界は、アンソロジー中心に編まれていたといいます。万葉集、古今・新古今和歌集、藤原定家の十三代集など、それぞれの視点やルールの中で統一性を持って選ばれた作品を一堂に集めた詞華集が数多く編纂されていました。その時代には、それぞれの個性の作品が一つの書物の中に輝きを放っていました。
 その後20世紀に入って正岡子規が隆盛したあたりの時代から個人の詩集や歌集が編集される様になったと言われています。その頃から徐々に文学からは「アンソロジーの感覚」が失われ、傾向としては個人志向が中心となり、限られた個性との出会いばかりが増え、そのことで対話が豊かなものにならなくなってきていると言われています。つまり、その作家の個性が見え難くなっていると共に、他者とのコミュニケーション感覚までが失われつつあるということです。

 「個性」を主張しすぎる時代にあって、違った意見や思いに学ぶこと無しに、それぞれの「持ち味」を知る術はないと思います。アンソロジー感覚が教えてくれることは、年齢・性別や考え方の違う異文化集団との交流を通して、他者の視点を自分の中に取り込むことで、自己中心的でない社会性を獲得することが出来るのだということです。
 出場する団体の作品をこれまでに鑑賞したことがある皆様は、同じルールの下で他の団体とは違った作品を提供するその劇団の作品の個性が、いつもよりも際立って見えることでしょう。そういった感覚こそが舞台作品により社会性を与え、活性化させ、これまでにお芝居を敬遠しがちだった方に対しても、門戸が開かれたエンターテインメントを提供して行くキッカケになるのでしょう。

 もう一つ、真の意味での自由な作品を体感して頂きたいとはどういうことか。それは、劇団劇場の重要なキーワードである「制限」が、作家の力を試すものではあっても、決して自由を奪うものではないということです。限られた時間、音響、照明。そして課せられた小道具やシーン、台詞などが作品に対してもたらすのは、本当の意味での自由な作品でしょう。
 各団体は課せられたルールに従いさえすれば、あとは何をやっても良いという権利を保証され、悲劇・喜劇・コントにお笑い、はたまた舞踊や朗読に落語など、舞台作品であればパフォーマンスの如何は問いません。こうして敢えて作家の前に共通の壁を作ることによって、何を上演しても良いという「ルールなしの作品群」では感じることの出来ないリアルな自由さを皆様には体感して頂くことができるかと思います。

 劇団劇場という名前は「○○劇場」という空間的な括りの意味を持ちますが、もう一つ、「劇団○○」という集団的な括りになっているのに気付かれた方もいるかと思います。これは出場団体と当日いらっしゃるお客様が作り上げる一日限りの架空の劇場、「劇団劇場」であると共に、そこに集まった人々全員の劇団、「劇団劇場」であるというものです。ここに込めたお客様と我々との、またお客様同士の一体感を、ライブハウスという劇場よりも演者とお客様が近い場所で味わって頂けたなら幸いです。
これらの理念を実現させて行く為には、皆様に継続してお楽しみ頂くことが最も重要だと考えますので、厳しい意見でも辛口な評価でもお勉強させて頂くことができれば、本当に有り難いことです。